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行きたい時に行きたい現場に行く永遠のにわかオタク。全次元の男子バレー関連、若手俳優、隣国アイドル、J事務所、スケートなどを鬼の形相で追っています。

演劇ハイキュー、幻の公演と呼ばれることとあの日見たもの

 

演劇ハイキュー!!の新作公演が発表されてしまった。ゴミ捨て場の決戦の舞台化を長らく楽しみにしていた自分が「発表されてしまった」とわざわざ表現するのは、ずっと引っかかっているこの春にわずか4公演で幕を下ろすことになった前作「最強の挑戦者」のこと。

 

新型コロナウイルスのあれこれで舞台界隈どころか世間が緊急事態宣言で大きなざわつきの真っ只中に入ろうとする直前、わたしは最強の挑戦者公演の初日の会場にいた。

 

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新生烏野の「新生」ではなくなったパフォーマンスレベルの向上と初登場とは思えない稲荷崎の洗練されたチームワーク。その新しい二塔を支えてくれた梟谷。帰って来た馴染みの音楽たち。全てを納得させられる熱量ある演劇。初代座長の言ってきた「圧倒的な演劇」が、世代交代してもなおそこにあったことが嬉しかった。苦境を乗り越え開催してくれたことが嬉しかった。立ち上がって拍手したかった。コロナのあれこれで退場規制とか色々あったので、心の中でめちゃくちゃスタオベした。

 

演劇ハイキュー(以下ハイステ)に通うファンにはなんとなくわかるところがある人もいるかもしれないけれど、前作「飛翔」を観て作品の今後がどうなっていくのか不安と期待が入り混じることになった自分を救ってくれたのが「最強の挑戦者」だった。

 

 

会場内外は今まで感じたことが無いほどピリピリした空気だった。マスクにビニール手袋に黒服のスタッフが会場周辺に間隔を開けてたくさん立っていた。マスクの無い人は入場禁止・入場時の手指消毒・サーモグラフィー・会場のいたるところに消毒液を配置・物販の感染対策・スタッフを数メートルごとに配置し人と人との距離を取るよう監督・誘導する等これ以上ない厳戒態勢を徹底して公演を決行してくれた運営には本当に感謝している。少しずつ周りの舞台が諦めざるを得なくなっていく中、ダメかもしれないと思っていた公演をたった4公演でも見せようと出来る限りを尽くしてくれたことが本当に有難かった。

 

 

けれど。それとこれとは別だと言うのはオタクのわがままだと分かっていても、劇団側には既に押さえていた秋公演用の会場やキャストのスケジュールの都合やコロナの影響で受けたあれこれをカバーしなければいけないことを含め数え切れないほどの事情があるとは分かっていても、それでも諦めたくないこともある。

 

だってあんなに彼らが魂込めて作り上げた「最強の挑戦者」はたった4公演しか上演されず、映像としてすら残されていないのだ。沢山の人が稲荷崎を生で見られなかった。

 

状況が状況だったから公演中止の判断は絶対に正しかったはずで、キャストもスタッフもファンも守ってくれて本当に有難かったと思っている。けれど、たった2日間4公演とゲネプロ映像の期間限定公開だけで終わってしまうなんてあまりにも悲しい。原作では単行本6冊にわたる超大戦だ。お祭りで、妖怪大戦争で、これからラストを迎えるハイキューの今後の展開で大きな鍵になる部分だ。なのに、そこだけがハイステからぽっかり抜け落ちる。

 

過去の公演は全て映像で振り返ることができる。この作品ただ一つを除いて。もうどこからも「最強の挑戦者」は見られない。

 

 

たとえば今後アンケートなんかで「最強の挑戦者の再演をお願いします」と書き続けてそれが万が一叶ったとして、あの大人数全員のスケジュールを合わせることが難しかったりすると、もうあのメンバーでの最強の挑戦者はもしかしたら本当に見られないかもしれない。こんな形で「幻の公演」になってしまうのだろうかと思うと、そう呼ばれるのを聞くことすら悲しい。誰のせいでもないから、余計に悔しい。

 

 だからせめて、前回書ききれなかった分の観劇時の感想とゲネプロ映像公開を踏まえて自分の見たものを書いて残しておこうと思ってこの記事を書きます。幻でも奇跡でもなく、彼らが確かに作り上げた努力の結晶みたいな作品の話を、思い出せるだけ。

 

 

 

烏野、「新生」と呼ばせない覚悟

 

 これについては観劇時の感想の記事に既にまとめてあるのだけど、先日の和田さんのサントラ質問会で色々と納得した部分があったので文字で残しておきます。上手く言葉に出来る気はあまりしないけど、自分なりに消化できたことをできるだけまとめておきたい。

 

 (観劇時の感想記事)

huntermasa.hatenablog.com

 

 

飛翔で今まで使ってきた馴染みの音楽を使わなかったことに関して不安に思っていた人は多いんじゃないかと思うけれど、それに関して和田さんから「飛翔のオープニングに演劇ハイキューのメインテーマをあててみたけどしっくりこなくて真新しい曲を書いた」「飛翔を乗り越えた稲荷崎戦でメインテーマをあててみたらピッタリだった」という話があって、なるほど、となんだかすとんと納得したような気持ちになれた。

 

もちろん飛翔の時の自分の素直な感想や思ったことは事実で変えるつもりはないし勝手にもっとこうできたんじゃないかと色々言っているけれど、そもそもが「これまで新チームが入ってきても上手くやれていた」ことと新生烏野のケースとはまったく別物だったということを、飛翔と最強の挑戦者を通して改めて感じた。主役校でキャスト全替えとかいう前代未聞のことをやって違和感が1ミリも生じないわけがなかったし、3年間少しキャス変を加えながらも14人全員で繋いできた初代烏野とはなにもかも状況が違う。先代がいるということの難しさ。あのメインテーマがしっくりくるような烏野になるための経験と時間が、本番の舞台の上で必要だった。

 

 

飛翔は「新生」烏野にとって烏野としてやっていくために必要な助走であり泥臭くて苦しい時間だったのかもしれないと、最強の挑戦者での躍進を見てやっと思う(飛翔でのああだったら・こうだったらよかったというのは別として)。

 

現に烏野のパフォーマンスレベルはぐんと上がったし、群舞や坂道での前転の揃い方・高くなったリフト・アクロバティックなパフォーマンス(鐘ヶ江くんの受身はすごすぎて怪我しないでね!となった)色んな面で全員のベクトルがひとつに定まったのを感じたので、きっと相当な覚悟でこの公演に挑んでいたのだろうなあ。ぐるんと一回転?半回転するタイプのリフト、かっこよかったです。(※追記 キャスト配信より、あのリフトは「ねぶた」と言うらしい。稲荷崎の間ではとっとこねぶたろうと呼んでケラケラしていたとか)

 

エンディング後The Brainが流れた時はゴミ捨て場だ~!心の準備しよう~!と思えたけれど、残りの公演が全て中止になってしまった今は、彼らの大きな飛躍になったこの公演を形にして残してほしいしもっと生で見たかったと思わずにいられないのも本音。

 

ゲネプロでは烏野も稲荷崎もちょこちょこミスはあったけど本番は全然そんなことなかったということもちょっとだけ言っておきたい。少なくとも自分の見た公演は。「バレーボール、排球」の群ゼリから空気がビリビリ振動するような気迫だったの、もう一度味わいたいなあ。

 

 

もっと見ていたい、劇団ハイキューの稲荷崎

 

バレー経験者のアランくん(あの漫才絶対地方公演を経たらめっちゃパワーアップしたはず)、ハンドボール日本一こと動きが綺麗過ぎる北さん(土台がかっこいい!との話、観劇中見れていなかったのでゲネ映像で確認したら本当にかっこよかった。足90度)、漫画から出てきたまんまの大耳さん、とかいろいろ個人の話をするとキリがないけれど「もっと見ていたい」は彼らの舞台上の姿でもあり、彼らの劇団ハイキューとしての活動のことでもある。

 

勿論私たちは舞台を観に行っているわけなのだけど、ハイステといえば公演1ヶ月ちょっと前からの稽古期間からSNSで写真が上がったりハイキューと絡んだツイートがどんどん流れてきて、本番が始まり演技を見て、地方公演へみんなで出かけ40前後もの公演数をこなす姿を見守って、気が付いたら大千秋楽の頃には初参加のキャストでもどんなに人数多くてもメイクなしの顔でも誰が誰だかわかるくらい馴染みの顔になっている、という流れが自分の中では半ば当たり前になっていたわけです。

 

それが先日投稿されて喜んでいた劇団のリモートバレーの動画で、ほんの一瞬の出番でも歴代キャストは大体誰だかすぐにわかるのにたまに「うん?」となるのが稲荷崎のメンバーだった時、たった2日間4公演で終わってしまった結果がこうなのかと思い知った。

 

初登場とは思えないチームワーク、演劇ならではのやかましい系最強の挑戦者、たった数公演でも見られたアドリブ力の豊かさとユーモア。あと全体的に声がめちゃめちゃデカイ(元気でよろしい)(市尼っぽい)

 

もっと知りたかったしもっと見ていたかったし、劇団ハイキューでの数ヶ月を思う存分楽しんでいるのを見届けたあとにちゃんと「お疲れ様」と言いたかった。初日でこれなら大千秋楽どんなクオリティになっていただろうと今でも思う。

キャストのインスタライブでの「ハイステ稲荷崎でツッコミは誰か?」という質問に「みんなボケる。誰かがボケるとみんな俺も俺も!とボケ倒して収拾が付かなくなって最終的に最初にボケた奴に責任転嫁する」と話しているのを聞いた時にこのチーム絶対面白いやつでは?と思ったし、いい演技を見せてもらったからこそ舞台の上の姿は勿論、バクステもめちゃくちゃ見たくなった。

 

いつかどこかで、ハイステ稲荷崎にもう一度会いたい。

 

 

 

新しい二つの塔を支えた梟谷キャスト

 

ハイステ経験値としては烏野・稲荷崎・監督マネージャーOBOGよりも先輩にあたる梟谷トリオがいてくれたこと、最強の挑戦者という公演の支えだったと思う。梟谷のメインでの出演シーンは時間軸がわりとブレブレで、これ春高何日目の話?狢坂と1回戦かぶってない?となるところがあるくらいには色々とアレであまりストーリー的な絡みが無く「梟谷(概念)」みたいになる状況の中、前説役・試合解説役・女性ファン役などあらゆる場所で作品を支えてくれた今作の縁の下の力持ちでした。

宮兄弟ファンのひかりとみやこ、地味に毎回スガさんを煽る台詞が日替わりだったのもすごい。思わず2L写真買ってしまったのはわたしだけではないはず。

木兎さんの「お前がバレーにハマる瞬間だ」が聞けたのも嬉しかったなあ。これで私たちは3人の木兎さん全員のこの台詞を聞けたわけで、幸運なことだと思う。ラバくんの木兎さんのこの台詞は聞けないかもと思っていたりした。

 

そして衝撃の事実、この座組で一番の長老がなんと東拓海くんさんである。進化の夏で初舞台を踏み「喋ったら泣きそう」と本番前震えていた、はじまりの巨人のピンチにヒーローの如く現れ梟谷を繋いでくれた、東京の陣で崇人くん頌利くんを支えたかったと泣いた、あの東拓海くんさんである。本役の苦労人木葉と解説役と前説MCその他諸々を器用にこなす姿を見て、初舞台の進化の夏の時も「めちゃめちゃ木葉だな!?」と驚いたけれど、人がこんなにも頼もしくなっていく姿を見せてもらえるなんてすごいことだなと感じた今作でした。

 

欲を言うなら狢坂戦、ちゃんとした形で見たいなあ。 木兎さんの真骨頂、赤葦の苦悩、梟谷の強さを、派手な色の敵と対峙する舞台の上で。

 

 

 

ポジション経験の多さが生む強さと宮兄弟

 

 ステ宮兄弟、一生見たいので本当に円盤化なんとかなりませんか~~~~~!?細かいリズムまで落とさない息の合った双子ダンス、他の人にフォーカスが当たるシーンでもオフマイクでどつき合ったり何かしらこそこそ話して意気投合していたり、地のお顔はそんなに似ていないはずなのに一緒に板の上にいるとDNA......と思わざるを得ない瞬間が山ほどある。3回の観劇分では他にも目が行っていてフォーカスし切れなかったのでいつか再演がもし叶ったら、二人にフォーカスし続けて見ていたいと思うくらい見所がありすぎた。

 

双子速攻・裏の治のトスの精度の高さで思い出したのが、リアルなバレーで見てきたポジション経験の多さが生む強み。学生バレーは特に「セッター以外は全部一度やってみたことがある」という人が結構いるくらい、わりと色々合うポジションを探すために経験するそうだけど、治はセッター経験があるのと同時にとにかく突っ走る侑と一緒にやってきた結果レベルの高いオールラウンダーになっていて、それが稲荷崎の強みのうちの大きな一因になっている。

 

昨年の東山高校がそれに近かった。天才的な采配をする正セッターに加えリベロの彼もめちゃくちゃにトスの精度が高く、聞くとなんと二人は中学時代ツーセッターを組んで日本一まで上り詰めていたのだそう。加えて今年日本代表にも招集された大エースの高橋藍くんはリベロの経験があり、サーブで狙われようと全く崩れない。あっちを潰してもこっちが上げる、こっちが上げても全員が打てる、それが出来るチームの強さを春高2020で目の前で見ていて、その後に見たステ宮兄弟のおかげで改めて稲荷崎の強さを再認識した。

 

たった一人で稲荷崎を背負って飛翔に出てきたくせ者お兄さんっぽかった松島くんの侑が、稲荷崎の仲間に囲まれるとガチャガチャ煩い弟分・でも一本芯の通ったプレーヤーになっていることがそこに立っているだけで分かってめちゃくちゃに最高でした。

 

それはそうとして、実現しかけて結局しなかった双子インスタライブコラボ、いつかやりませんか???何回か松島くんがライブ中「神里~!何してんの?コラボしようよ」みたいなことを言ってたのに完スルーだったの未だに笑ってます。

 

 

 

冴子姉さんにかっこ良死

 

あまりにも色々長々と垂れ流してしまったのでいい加減ここらへんで終わりにしたいのだけどこれだけは書いておきたかったので手短に。

冴子姉さん役の安川里奈さんのプロフィールを見たときに太鼓が得意だと書かれてあったのを見て、へ~楽しみだな~!くらいに思っていたのだけど、楽しみだな~!では全然済まされないくらいのクオリティで衝撃的だった。とにかくハチャメチャにバチ捌きがかっこよくて宮太鼓も締も桶も全部やれるガチの人だった。あまりにもかっこよくて終演後ブロマイド買いました。

 

原作で日向西谷が「かっこ良死する...!」と胸を押さえていたのをみて笑っていた過去の自分へ。お前も死ぬぞ気を付けろ。

 

 

 

 

" 千秋楽とは言いたくない。全然言いたくない。"

 

 今後最強の挑戦者の扱いがどうなるかはわからないけれど、ひとつだけ円盤が抜けるのもどうしても違和感があるしまだまだ見たかったし彼らの思いと努力が詰まった素敵な作品だし、そもそもが抜け落ちたら話が繋がらないわけで、できることをしたいと思う。そのために、ゴミ捨て場の決戦が発表された以上出演キャストの事も関わってくれるスタッフのことも全力で応援したい。

 

ちょうど色々舞台への向かい風が強くなってしまったこのタイミングでの発表、どういう形態でどこでやるのかそもそも開催自体が可能なのか色々心配しながら待つことになってしまうのが悲しいけれど、まずは決まった目の前の事を応援しながら、確かにそこにあった「最強の挑戦者」の動向を見守るしか今はできない。

 

再演を願うファンの声が多かろうと、「東京の陣」の実現の時みたいにはすんなりいかない状況であることはわかる。

 

でも、「いつかまた会えることを信じて」と言ってくれたキャストの言葉や「千秋楽とは言いたくない。全然言いたくない。」というウォーリーさんの言葉を噛み締めながら、いつか「最強の挑戦者」が幻の公演なんかじゃなくなる日が来るのを願うことを、今は許してほしい。

 

 

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